雁屋

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序文

  俺の中では、「美味しんぼ=蛭子さん」だね。

 この両雄は、明らかに狂ってるけど、何故か世間では無害扱いを受けていて、お茶の間で人気を博してるっていう点で共通してる。これは恐ろしい事態だと思うよ。今でこそ蛭子さんは麻雀賭博で捕まったりして、その狂気が浸透・認識されないままに、道徳的な配慮として後退させられちゃったけど(結局、蛭子さんの根本的な部分は全然報道されないままだった)、美味しんぼは未だ”良書”として80巻で1億部を越える大ヒットを飛ばし続けている。 完全に彼岸に達している表現なのにね。ここでは、世に蔓延するそんな楽観的な美味しんぼ観に疑問符を投げかけていこうと思ってる。勿論、俺と同じ思いを抱いている人も沢山いるから、そういう人達と一緒にサイトの質を高めていきたい。

 ただ、誤解してほしくないのは、俺は美味しんぼ(=雁屋先生)にNOと言いたいとか、笑いものにしてやろうとか、そういうつもりは毛頭無いってことだ。

 俺は、雁屋先生は、数少ない「本当のこと」を言っていける偉大な人だと尊敬してる。大好きだ。まぁ、思想に極端な部分があったり、考え方が偏向していたり、発言が度を越したりはしているけど、ここまで本質的なことに直言していくことができる人はそうそういない。多分、本当のことや本質的なことに対しては、それの善悪や正しい間違ってるはあまり関係なくて、言及するか否かの姿勢や覚悟こそが重要なんだろう。俺もかくありたい。そこで、雁屋先生への深い尊敬と憧憬、愛を表現していくために、当サイトでは先生のことを「烈士」と付け、呼ばせて頂くことにした。雁屋烈士だ。なんて相応しい呼び名だろうか。素晴らしい。

 ここは、お茶の間向けな要素の薄皮一枚隔てた下にある、美味しんぼの本当の姿を露わにし、そっちのほうが遙かに魅力的であることを知ってもらうために作られた。そしてここは、偉大なる憂国の士、雁屋哲先生の作品を分析し、本邦の発展のために尽力・邁進するサイトだ。よろしく。


2002/12/1




海原雄山界の現状

  美味しんぼの主人公である海原雄山には、偉大な先人達の膨大な研究により、複数の人格が存在していることが立証されている。すなわち、初期雄山、中期雄山、後期雄山である。

 ひたすらに横暴で、NGワードばかり公言し、人格破綻を起こしていた初期雄山。
 究極対至高対決において、その圧倒的実力で山岡栗田を一敗地に塗れさせ続けてきた、強大な壁としての中期雄山。
  そして、栗田に籠絡され、頼み事をよく聞くようになり、孫を抱くという腑抜けに成り下がってしまった後期雄山だ!

 なお、今挙げた3つのカテゴリは、最もアバウトなものであることを予め書いておこう。これは、無知なる大衆に海原雄山界を分かり易く紹介するための、我々からの優しさである。

 海原雄山界の正確な定義だが、スタンダードな定説は唱えられているが、万人が納得する説は未だ存在していないのが現状だ。初期に限っただけでも定義は諸説入り乱れており、「至高のメニュー発足までを初期とし、単純化するべきである」という説もあれば、「発足までを初期とする案には賛成だが、初期を更に細分化し、『初期雄山01』『初期雄山02』というように整え、体系的に捉えるべきである」という案もあり、まるで収拾がついていないのだ。

 上述のような議論に加え、「そもそも初期は、雄山がビニールハウスのトマトを”認めた”ところまでであるため、その説は根本的に間違っている」という主張までもが行き交っており、初期と中期の境目に関する論争すらも決着はついておらず、議論は終着の気配をまるで見せていない。

 さらに、「今の雄山は、後期雄山ではなく、未来雄山とするべきである」という新説も一部の新興団体から強硬に主張されており、ただでさえ纏まりに欠ける海原雄山界は、ここに来て更なる混迷の時期を向かえているのだ。

  以上のことから分かるように、海原雄山界に関する問題の複雑さと重要性は、もはや”学問”と呼んで差し支えないレベルに達していると言えよう。しかし残念ながら、未成熟で、未整理な、黎明期にすら達していない学問である。今、海原雄山界では、強い求心力と他の説を圧倒する強さを併せ持った、革命的な論と、論客が待たれている。

  なお、当サイトにおける海原雄山界へのスタンスだが、残念ながらまだ結論を出せていない状態である。研究を行い次第、徐々に成果を発表していこうと思う。

 

2002/12/3






言葉の独立性

 メリークリスマス!街行く恋人達を尻目に、俺は「男組」(※)を片岡のような姿勢で読み、男の何たるかを学びつつ、更けていく聖夜に想いを馳せることにするよ。

 それにしても、昨今の日本言論界を騒がせている「にょ」や「でつ」に代表される特殊語尾ブームであるが(例示がやや古いのはご勘弁願いたい)、大館同志の「でえっす!」には到底適わないね。


共産勢力の南下から日本を守る大館要造氏

全体図



 俺は何も懐古主義者ってわけじゃないけど、今現在使われている特殊語尾には、強度が無いよな。簡単に誰でもコピーして拝借できるような言葉には、市民権はあっても独立性が無い。

 前述したような語尾は、商業性に基づいた、予め広く使われることを前提として作られた、稀釈されてこそ活きる言葉だから、俺が今言っている否定は的はずれではある。だけど、俺が求めているのは、そんなお手軽なものじゃないんだ。「でえっす!」のような、とても真似出来ない、その人にしか使用を許されていない言葉なんだよ。一人歩きすることなく、発信者から離れること無く、何時までも留まり続ける強度と融通の利かなさを持つ言葉こそが、俺は大好きなんだ。

 それは、伝達を目的として使用される”言葉”というツールとしては失格なのかもしれない。だけど、表現行動として発せられた言葉としては、この上なく幸せと言えるのではないだろうか。本当に人の記憶に残り、心を動かしうる言葉は、普遍性を持ってはいない。それは、マイノリティー/マジョリティーのくだらない二元的な世界とは完全に別の世界にあり、独立し、全ての人間に何かを強く訴えかけてくるものだ。

 そして烈士作品は、どのページを開いてもそうした表現に溢れている。これが、俺が烈士についていく大きな理由の一つだ。メリークリスマス!

 



雁屋作品・登場人物紹介

 


 




 小田(野望の王国)
  右翼の大物。総理大臣に腰を揉ませることが出来るというやりすぎな権力を持つ。小人と乱交パーティーをするのが好き。人前で唐突に国宝級の壺に排尿しはじめるなど、奇行が目立つ。

 

名シーン1 挨拶無しに部屋に入ってきた人に

 


名シーン2 排尿




一般人の自然な感想







 柿崎 憲(野望の王国)
  川崎中央警察署長。キャリアの超エリートであり、日本最大の暴力機構である警察を掌握し、それにより日本を支配せんとする野望に取り憑かれた男。銃の腕前、車の運転技術、人心掌握術に長けており、性格の冷酷残忍さも加わり、個人としての実戦能力では本作中ナンバーワンなのではないかと思われる。他にも、ロケットランチャーがまるで通じないというスーパーパトカーを作る技術を有するなど、そのポテンシャルは底が知れない。また、金上の前世でもある。

名言
「あの安田講堂を見ろっ!!あの安田講堂は東大のシムボルだ!明治以来百年も続く、立身出世主義のシムボルだ。正に日本という国の愚劣さを象徴するものだっ!!」
「このクソバエどもっ!!なんだその目つきはっ!!きさまら卑しい身分の人間のくせにこの私をジロジロ見るとは無礼なっ!!」


 

片岡 仁(野望の王国)
 主人公その2。征五郎と同じく東大法学部で優秀な成績を残すも、野望に取り憑かれ、日本を支配するために邁進する。征五郎に輪をかけて何もしない。

名言
「この世は荒野だ!唯一、野望を実行に移す者のみがこの荒野を制することが出来るのだ!」
「我ら出立の時か!」







白川天星(野望の王国)
  新興宗教団体、救国教団教主、白川玉堂の息子であり、征五郎片岡の後輩。「信仰心が強いから痛覚が麻痺しておりナイフで刺されても銃で撃たれても死ぬまで動きを止めない」という無茶な設定の実戦部隊を有している。最初は征五郎片岡の野望の同志として協力するが、次第に2人を疎ましく思うようになり、遂には反目しあう。

名言
「ぼくは世界でいちばん美しい。美しい者が美しくない者どもを支配するのは当然なのだ。(大蛇を身体に巻き付けながら)」

 



 



田崎

 小田の部下の大物総会屋。右翼暴力団を手兵とし、暴力の力を背景にのし上がってきた男。柿崎に無実の罪で逮捕され、内部告発を恐れた小田の放ったアサシン(ヤク中が運転のトラック)の手にかかり、志し半ばにして非業の死を遂げる。


名シーン

 



橘征一郎(野望の王国)
 橘家長男。本家の子。橘家を継ぐも、征五郎が雇った暗殺者に早々に殺される。



橘 征五郎(野望の王国)
  主人公。東大法学部1,2を争う秀才であり将来を期待されていたが、「日本を征服する」という野望に親友の片岡仁と共に取り憑かれ、父の死をきっかけにその為の行動を開始する。相当優秀なはずなのだが、他の人達があらゆる意味で凄すぎるので埋没気味。作中でも大抵驚き役に終始し、あまり何もしない。

名言
「ぼくたちが法学部政治学科で政治学を学んだのは、人が人を支配する仕組み、権力をつかむための方法を学ぶためだったといっていいでしょう!」




橘征三郎(野望の王国)
  橘家三男。本家の子。征一郎死亡後、葬式の日に征五郎が雇った暗殺者に早々に殺される。征四郎に激似。

 


橘征四郎(野望の王国)
  橘家四男。本家の子。「征一郎、征三郎は征二郎に殺されたのではないか……」という疑念を抱き、本家派を引き連れ、征二郎と内戦を行う。だが征二郎の雇った在日米軍に完膚無きまでに撃破され、最後はコンクリ積めで東京湾にドボーンであり悲惨。征三郎に激似。ウェブ野望の王国界では征三郎と征四郎にクローン説有り。

 


橘征二郎(野望の王国)
 暴力団・橘家の総長で征五郎の実兄。妾の子。同じ妾の子である征五郎を愛しており、征五郎もまた征二郎を最も愛しているが、己の野望のために2人は闘うことになる。天を戴けるのは何時の世も1人だけなのだ。ちなみに力量は登場人物の中でもトップクラスであり、組織力と統率力は類する者が無い。三国志で例えるなら曹操くらい強い。ヤクザ同士の抗争に米軍を介入させるシーンとそのセンスは圧巻の一言。










疋矢 繁
(野望の王国)
  日本最大の暴力団・花岡組の若衆頭であり、関西愛犬家協会理事長。裏切り者の腕を刀で一刀両断する、目上の人を邪魔だから爆殺するなど、苛烈を極める暴力性と残虐性を誇る一方で、異常な犬好きとして物語に華を沿えてくれる憎めないキャラクター。また、重度のアル中。一巻における彼による犬レビューからは、美味しんぼの過剰な料理批評の原型が垣間見られ、烈士の創作の源流を辿ることが出来ることであろう。必見である。話す言葉がいちいち名言となってしまう希有な人物。

名言
「う ううう…… す すごいっ、あのチャウチャウとアフガンハウンド!」
「(チャウチャウを見て)この顔、頭の形……胸回り……足の太さ……どれをとっても非の打ちどころがない……しかも、この大きなことちゅうたら子牛も顔負けやないか……こんなチャウチャウは初めてじゃ」
「(アフガンハウンドを見て)ええ姿じゃ。気品がある。王侯貴族の気高さみたいなもんを体中から発散させとる……こんなアフガンハウンドが日本におったとはのう……」

 

















 

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