NAPH

 

 

 

 

10/1

 心ある人は全員観ているはずの、本日放映された「藤岡弘、探検シリーズ第3弾 南米ギアナ高地 切り裂かれた大地の闇に謎の地底人クルピラは実在した!!」 ですが、期待に違わず、異常に素晴らしい出来でした。

 本探検隊は、故・川口浩氏が結成した、『川口浩探検隊』の後を継ぐ形で生まれ、第1弾では『アマゾンの謎の猿人ジュンマの後ろ姿を確認』、第2弾では『ベトナム密林の奥深くで、人食いヘビ・ゾォンドゥーを発見、捕獲』という大戦果を上げています。

 心無い人間は曰く、「ジュンマの後ろ姿が非常にボンヤリとしていた」「ゾォンドゥーが話に聞いていた大きさに比べあまりにも小さかった」「というかあれは全然人喰いヘビじゃなくて普通のヘビ」などと後ろ指ですが、藤岡隊長は、そんな讒言や陰口に屈する人ではありませんでした。

 地表最後の未踏地と言われるギアナ高地に、謎の地底人『クルピラ』(絵はテレ朝制作のイメージ)が存在しているらしいとの情報を入手した藤岡隊長は、探検隊を招集、仮面ライダーやセガのCM、深夜戦隊ガリンペロなどの名番組で鍛えた軽快にして重厚なフットワークを遺憾なく発揮し、瞬く間に隊を高地専用に鍛え直し、一路ギアナへと向かいます。
 ギアナを中心とした南米にてクルピラに関する情報収集を行う藤岡隊長は、クルピラの正体を推測する中、一つの重要な情報を得ます。それは、『南米地方には宇宙人の痕跡が数多く存在する』というものでした。
 確かに南米からは、ミステリーサークルの多発、数多くのUFO目撃証言に始まり、作られたとされる時代の技術では制作不可能とされる物体(オーパーツと呼ばれる。ナスカの地上絵、三角翼飛行機黄金像など)が数多く発見されています。それらと、謎の人型生物を結びつけて考えた藤岡隊長は、当然の帰結として、クルピラ宇宙人説に辿り着きます。
 その後、遺跡に記された人型の絵文字を見つけては「宇宙人だ」、丸い絵文字を見つけては「UFOだ」と強く主張する藤岡隊長と、何を聞かれても「はい!」としか答えない忠誠度100の隊員達のシークエンスが続き、いよいよ探検隊はクルピラがいるとされるギアナ高地へと突入します。

 未開のジャングルを越え、150メートル(隊長目測)の崖をザイルに命を託し降りる、洞窟内部に謎の足跡と食事跡を発見する、洞窟を間違う、原住民の襲撃を受ける、塩を贈り和解する、倒木の橋に人型の絵文字を発見しクルピラ宇宙人説を確信するなど色々あって、ついに隊はクルピラが住むと言われる、河で隔絶された森に辿り着きます。そこで一行が見たものは!

 隊の追跡から逃げるように密林を駆けぬけていくクルピラだった!

 その後、横山光輝三国志における、廖化が司馬懿を追いかけたんだけど騙されて他の道に逃げられちゃいました状態がしばらく続き、ついにクルピラが逃げ込んだと思われる縦穴洞窟を発見!突入突入突入ー!!!そしたらなんか藤岡隊長は「クルピラはここにいる。足音が聞こえる。間違いない」って確信してるのに、田中信夫によるアナウンスに至っては「クルピラはいた!」って言ってるのに、「穴が小さくて入れないから待機だ」っつってしばらく待ったあと「隊員の疲労は極限に達している。指揮官として勇気ある撤退も必要」とかなんとかそんな感じのこと言って唐突にスタッフロール流れて終わり。お見事!!!

 



10/17

「なんか俺にもよく分からないんだけど、オマエのメッセ、人がこれ以上追加できなくなったから。つうか接続させねえから(意訳)」みたいなことを言われ、メッセに上手く接続できなくなり、新規の人を登録できなくなるという憂き目に遭い、msnメッセンジャーライフが瓦解したよ。なんで以前極秘裏に使用していた新アドレスに変えることにしたよ。「メッセ無しの人生もいいかなぁ」なんて考え、ファイアーエムブレム聖戦の系譜を1日10時間やりこみプレイしたりと、新しい生き方を模索したものだけど、やっぱりオレ、メッセ無しじゃ生きられないよ。生まれた場所に帰るよ。でも、みんなのメッセアドレスが確認できないという異常な事態に見舞われてるんだ。だから胎内回帰したところで孤独、ということもありえるんだね。だからなんのかんの大変なんだけどがんばってみんなのこと登録しなおすよ。ごめんね。

koukinzoku_5@hotmail.com



10/22

 美味しんぼ全話解説 『雁屋略考』

  ※2024年冬 完成予定


序文

 雁屋略考では、週刊ビッグコミックスピリッツにおいて18年の長きに渡り(※1)連載中のマンガ、『美味しんぼ』の全解説を行う。本解説では、作品に登場する料理の紹介を初めとし、ストーリー解説、登場人物研究を行っていく。また、それらをメインとして行う傍ら、長期連載に伴うキャラクターの内面・外面の変化を取り扱ったり、栗田の奇行を徹底的に追ったり、作中にそれとなく漂っている雁屋思想を語ったり、生臭いことになったりする人間関係に着目したり、富井副部長特集を組んだり、谷村部長がごくたまに使用する「かしら」語尾について推論を打ち出したり、東西新聞社社員名簿を作成したり、美味しんぼで説かれている戦略を文章化しまとめ、孫子・呉子に並ぶ兵法書として”雁子(がんし)”として発表したりと、多様な方向性をもたせるようにしていく。そのため、本解説は、「解説」という言葉の意味からは、多少、あるいは大きく逸脱した内容になる場合があるが、そこは読者諸兄の優しさで包んで許してほしいと願う次第である。

※1
2003年現在

第一集/第一話 「豆腐と水」

重要度★★★★★  / グルメ度★★  / アウトロー度★★★★


 


ストーリー

 栗田ゆう子は大手新聞社『東西新聞』の新入社員。
 文化部に配属となった栗田は、「早く職場に打ちとけられるよう、誰よりも早く出社して、まず部屋を整理することにしてるんです」と殊勝な心がけを見せる、初々しく立派な子だった。
 新入社員特有のフレッシュな向上心を発揮する栗田だったが、山岡士郎との出会いから、社会正義であったはずの新聞機構に疑いを抱くことになる。山岡は、「飲酒し、そのまま会社に泊まる」「雑巾で顔を拭く」「記事を書かずに競馬場へ行く」「会食の場で「クソしてたから遅れました〜!」と堂々と言ってのける」などの奇行を繰り返すダメ社員であり、文化部のお荷物・給料泥棒扱いを受けていた。
 栗田は、「ああしたグータラにはなるまい」と張り切り、記事を書かせてもらうよう頑張るも、女性社員をコピー要員として扱うような男根主義に貫かれた社風に直面し、新聞機構への疑いは増し、意気込みはくじかれ、落胆は加速していく。山岡のような人間を平気で置いておく社と、女性を雑務に使役し小間使い扱いする社風に、「…新聞社ってこんなもの?」と思わず溜息を漏らす栗田。その目からは早くも五月病の兆候が漂い始めていた。
 そんなある日、文化部副部長・富井富雄から「今日の昼は料亭『白扇』で昼食会を開く、いいかね、業務命令ですぞ。『白扇』に全員集合!」との命令と共に、料亭・白扇での昼食会を開く旨が伝えられる。
 文化部部長・谷村秀夫の命令により催された昼食会には、一つの目的が秘められていた。
 それは、東西新聞社社主・大原大蔵より直々に下った特別命令『東西新聞社創立100周年企画”究極のメニュー”』の制作スタッフを選定する試験を行うことであった。
 試験は、『水と豆腐を、それぞれ三種類ずつ用意する。水は、水道水・白扇の井戸水・丹沢の山奥から汲んできた鉱泉水。豆腐は、スーパーのもの・上野の有名店のもの・京都の有名店のものである。これらを、どれがどれだか当てる』というものだった。多くの社員が「分かんね」と匙を投げる中、栗田は「海に面した東京の水と、山奥の丹沢の水の含有塩分の違い」に着目し、見事、試験を突破する。そして、ものの役にも立たないグータラ社員であったはずの山岡は、水の違いのみならず、「近距離の東京の豆腐と、遠距離から運ばれてきた京都の豆腐のわずかな風味の違い」を指摘するという並はずれた鋭敏な味覚を発揮し、試験をクリアする。
 どよめく社員達をよそに、大原社主自らの「後世に残す文化遺産として、人類の文化の辿り着いた究極の物として、最高のメニューを作るのじゃ!」という号令により、山岡と栗田は究極のメニュー担当者となったのであった。

解説

 週刊青年誌の連載としては世界一の長さを誇る『美味しんぼ』。第1集第1話『豆腐と水』はその記念すべき第一歩である。
 第85集まで発刊されている2003年9月現在から読み返すと、絵柄、雰囲気ともに全く違うことに改めて驚かされる。特に、いかに長期連載とはいえ、山岡と雄山のキャラクターはいくら何でも変わりすぎである。でもまぁ、かのゴルゴ13も連載初期には、『後ろに立った警官を反射的に殴ってしまい、仲間の警官達に取り囲まれあえなくブタ箱入り』というお茶目をやらかしたり、よく喋ったり、ニヤリとしたりしているので、キャラクターの極端な変貌は、長期連載には付き物であり名物といえよう。(ゴルゴ初期についてはこちらを参照。1(index).2(index)
 さて、第1回のタイトルでありテーマである『豆腐と水』だが、筆者は再読し、まず、よくもまぁ、こんな地味な題材を新連載初っぱなに持ってこれたものだなぁ、と感嘆した。確かに、あらゆる料理の根本・根幹であり、命の源である水をテーマに持ってくることにより、作者と編集部の、作品にかける誠実さと姿勢を、読者にまっすぐに伝えることができる。
 しかし、1985年当時は、まだマンガという表現媒体は娯楽の域を出ておらず、成熟した読者は少なく、演出や盛り上がりに乏しい作品は、受け入れられづらい環境にあったのではないだろうか。期待の新連載グルメマンガの第一回が「豆腐と水」では、肩すかしを喰らったような気分になった読者は少なくなかったのでは……。下手をすれば、美味しんぼは、ごくごく小数の読者の支持を得るに留まり、あっけなく連載終了に追い込まれていてもおかしくはなかったはずだ。当時、原作者である雁屋哲先生は『男組』『野望の王国』『男大空』などのヒットにより既に名を知られていたとはいえ、思い切ったものである。
 しかし2003年現在、美味しんぼは発行部数1億部突破という、青年誌最大の大ヒット作品となっている。(※実売8600万部)これは、雁屋先生の「本物は必ず受け入れられる」という信念の賜であろう。『水』は、”本物の追求”という美味しんぼの最重要テーマを余すところなく体現している素材なのだ。目先の人気取りより、遙か先を見据えた第一手としての”水”。これほど見事な第1回は、そうそうあるものではない。信念と決意と覚悟の顕れとしての第一歩、かくあるべしである。

 なお、上述の1985年当時のマンガ界云々という時代言及だが、当時筆者は5歳であったため、大幅に的を外している可能性があるので、間違っていたり、異論があったとしても、強い語気での反論や批判は優しさで包んで見逃して頂きたい。


追記
 日本美味しんぼ界では、もはや時節の挨拶として公式に使われている重要ワード「業務命令」だが、既に第1回で富井副部長が使用している。これは、水の事例に違わず、キャラクターや絵柄、作風は時と共に変化しているが、作品の根幹は不変であることの証左といえよう。

続く

 


 

10/28

「自分もワールド・ワイド・ウェッブに巻き起こる、キル・ビル・レビュー・ムーブメントに便乗しなくては」と思い立ち、雨の中、発奮し傘を差し、意気揚々と街に出るも、気付いたら HUNTER×HUNTER の18巻を購入し、帰宅していました。
 こういうことはよくあり、先日もパイレーツ・オブ・カリビアンを観ようと家を出たところ、ふと我に返ると漫画喫茶で5時間、ミナミの帝王を読み耽っていました。鎌倉に行き、参拝し帰ってきたときもあります。
 映画館に足を踏み入れる才能が、僕には欠落しています。もしくは、縁がありません。あるいは、星の巡りが悪いです。
 さて、仕方がないので、家で HUNTER×HUNTER 最新刊を読んだのですが、いやあ、ゲンスルー一行は素晴らしいですね。彼らは考え得る限り、性格的にも資質的にも実力的にも最高のドキュンであり、中学生思想を理想的な形で継承しています。異様に軽いノリで大量虐殺をするくせに、仲間は大事という点は感動的ですらあります。
 僕に息子が出来た場合、彼が11歳くらいまで育ち、自我に本格的に目覚め、「俺ってなんのために生まれてきたんだろう」と考え始めたら、頃合いを見計らい、「大切な仲間が一人でも出来れば、それは生まれてきた意味はあるんだ」「世界で一番素晴らしいのは中学生であり、もうすぐお前はその資格を有することが出来るのだ」ということを父親の立場から教えるため、ゲンスルー思想を吹き込もうと思っております。